ピアノ学習者に大人気のこの曲。ベートーヴェンのピアノソナタの中でも3大ソタナの一曲「悲愴」の2楽章です。1798年から1799年にかけて作曲したといわれています。まだ若かりし頃の作品です。
テンポがゆっくりで音数が比較的少ないこともありピアノ初級者でも弾くことができます。実際にレッスンに持っていくとなると中級以上のレベルは欲しいところです。
実はこの曲はプロがアンコールで好んで弾くほど知名度、完成度が高く本気で挑むと結構難しいところが満載です。
まずメロディーの音が少ないのに歌わなければならない。これは何を意味するかというと歌の表情の付け方、レガートがかかって音が伸びないと聴かせることができないということです。
バスの対旋律も同様に音を伸ばしながらかつメロディーを尊重する内声部はメロディーを邪魔しないように曲を引き立てていくということを巧く弾き分けるにはプロ級のテクニックが要求されます。
下記譜例を見ると結構、音の起伏が高いことが分かります。
この旋律が何度も繰り返され曲が盛り上がっていきますが、なぜ盛り上がるかというとこれだけの起伏があるから可能なのです。それだけにテーマが繰り返されたとき、ここはこういう場面、ここは・・・という具合に物語を作っていかなければなりません。
また二回目の繰り返し前のこの部分
三連符でスタッカートが掛かっていますが、切りすぎたり軽いと雰囲気を壊してしますので要注意の箇所です。私の解釈ではあまり音を切らずややノンレガート気味に抑えて弾くようにしています。
続くテーマ二回目。テノールの内声が補強され音が厚くなります。右も左もレガートが要求されるのでヨガのようにストレッチがきつくなります。
特に左のアルペジオ部分のレガートはハードです。
二回目の終始後は、新しいテーマに移るので一区切りついたと思わせる終わり方にします。ペダルも切りますがあまり唐突な印象を与えないようにしっかり切ります。
次に始まる新しいテーマ
ヘ短調のこのテーマは装飾音が多く切々と語り上げるように弾きます。装飾音の入れ方によってリズムが鈍くなってしまうので後の音符に掛けるように弾くのが良いと思います。
左パートはドの単音で始まりますが一つ一つ重めに何か神妙な面持ちで弾きます。後に続く和音とペダルで音楽を盛り上げます。
半音の経過区を経て主テーマに戻ります。
そしてドイツ語でAs moll(g# minor)のテーマ。ここから更に雰囲気が重たくなります。左、対旋律の三連符も重ためのノンレガートで弾きます。ここはスフォルツアンドで強く締めくくられますが私は強さで圧倒しないよう柔らかくフワーと弾くようにしています。
そしてE Dur(E major)に転調され安らかになりますがディミニッシュのバスの対旋律が挿入されます。ここはペダルを踏みっぱなしだったりきつく弾くと不安感が増長されるので要注意です。メロディーはあくまでもソプラノを伸ばし右手でディミニッシュの雰囲気を作ります。
経過区の後、4回目のテーマが繰り返されます。ここから内声部が三連符に代わります。徐々に動きを付けていきますが焦らないようにします。
そして最後のテーマの繰り返し。一番の盛り上がりどころです。左テノールの内声部も三連符に代わります。
気分的には一番盛り上がりますが盛大にやってしまうとそれまでの雰囲気を壊すのであくまでも圧倒しないようにです。
続く左のアプペジオ。
スタッカートがあり高音に着地します。私はこの四分音符にペダルをかけるようにしています。こうすると音が薄くなり何とも言えない空虚さが漂います。
最後の締めくくりはピアニッシモを慎重に。特に左の和音は静かに深く響くようタッチに注意します。
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