ピアノやそのほかの楽器、スポーツ、武道、今や様々な分野で脱力の重要性が説かれています。
「ピアノは脱力にはじまって脱力に終わる」という修行のような言葉を掲げられているのもよく見受けられます。
この脱力っていったい何でしょう。
私たち人間の身体は筋肉の運動によって動いています。
普段の生活で歩くとき、走るとき、立つ、座る、食べる、飲むなどすべての動作に筋肉の運動が関わっています。心臓、血管が血液を送ったり呼吸、胃・腸の蠕動運動などもそうです。
もし体のすべての力を抜いたらどのようなことがおこるでしょうか。
死んでしまいます。
私たちは、すべてのからだの力を抜くことが出来ません。
例えば心臓や血管、胃腸の収縮運動を自分の意志で止めることは出来ません。
そんなの当たり前じゃないか。
ということもあるかと思います。でも体の外に見えている部分でさえ自分の意志で力を抜くことが出来ない部分があります。
例えば「顎」。
顎は力が抜けてしまうとダランと下に下がって舌が出て涎が出っぱなしになってしまうでしょう。普段、意識して開けてない限り口は閉まっています。口を閉じるため力が入っているのです。
このように意識していなくても力が入っている部分があります。
瞼もそうですね。瞼は加齢や病気によって筋力が弱くなると目を開けていることが出来ずだらんと閉じてきてしまうようです。亡くなった俳優の萬屋金之助さんがそうだったとニュースで見たことがあります。
手や足の筋肉は比較的、力を抜きやすいです。それでも実は一見、単純に見える運動も色々な筋肉の共同作業で動いているので脱力をするのはなかなか難しいのです。
初心者は、何事も初めてなので覚えることがたくさんあります。
ピアノの前に座っただけで頭が真っ白になり何をどうやっていいのか分からなくなるでしょう。
楽譜を見ると黒い暗号の塊のように見え読むだけでも相当な脳の情報処理能力が必要となります。脱力なんてとてもとても気が回らないはずです。
上記のような理由を考えただけでも初心者は脱力ということを考えない方が良いと思います。
最初はごく当たり前の基本から入っていき簡単な曲を繰り返し繰り返し練習した方が良いのです。難しいことをやろうとすると脳が情報処理でパンクして筋肉の動きやその他に頭が回らなくなります。または何とか動かそうとして必要のない場所に力を入れて無理やり動かそうとしてしまいます。
例えば鏡の前で片目をつぶってみてください。きれいに片目をつぶることが出来る人は何人ぐらいいるでしょうか?何とか目をつぶろうと頑張ると眉間にしわを寄せたりおでこにしわを寄せたりすると思います。
これが余計な力の元なのです。
脱力については別の項でもっと詳しく説明したいと思います。
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