平常心

平常心
大学は、普通高校から進学したこともあって演奏の試験は初めてでした。緊張のしまくりで練習してきたことが全く活かせずまさにボロボロの演奏でした。
失敗すればするほど曲の難易度を上げ練習量も増えていきました。そんな中、どうしたら本番で緊張せずに結果を出せるのだろうと考える日々が続きました。
そして練習の合間に体操をやったりヨガをやったり自律訓練法など色々試していったのです。
大学4年の卒業演奏でメシアンの「<a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BC%E5%AD%90%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%81%AB%E6%B3%A8%E3%81%9020%E3%81%AE%E7%9C%BC%E5%B7%AE%E3%81%97" target="_blank">幼子イエスの24のまなざし</a>」から2曲、「悦びの精霊のまなざし」「幼子イエスのくちづけ」を決まったとき、開脚180°を習得することを決心しました。
これが出来れば本番で緊張しないに違いない、と思ったのです。調度その年の年末年始、昭和天皇が亡くなりテレビの番組が昭和天皇関係番組一色になりました。世の中が異様な雰囲気だったが忘れられません。
同じ時期、母の具合が悪くなりテレビとのダブルパンチが重なり緊張感が一気に増えたのです。
メシアンのあの複雑な和声、旋法、非シンメトリックン拡大など現代的な構成を覚えるだけでも大変なのに、卒業演奏という最後の試練を前に緊張感がマックスに達しある意味、常軌を逸した精神状態になり一気に無理やり開脚を出来るようにしたのです。
出来るようになって1週間は股関節のあたりの筋肉が痛かったのですが、その後は痛みが引きある種の達成感があったのを覚えています。
以来30年間、開脚180°の足はキープしたままです。この歳になったら何かいいことあるに違いない、と思いながら練習は続けてきました。
何かいいことあったかな?
呼吸は結構強いかも。周りの人から「いい声だね」とか」「滑舌がいい」とよく言われます。あと歩くのは得意です。今でも一日1万数千歩、歩いています。
多分、本当にやっててよかったと思えるのはもっと歳を取ってからなのかも知れません。
大学時代のそんな苦労した時から生涯のテーマが「緊張と弛緩」について研究することになりました。研究科修了後、本屋に就職したのもあり「緊張と弛緩」に関する書籍で面白そうなものがあれば読み漁っていました。
書店というところは毎日、色々な新刊が入荷するのでそれまで知らなかった分野の本などを知る機会が圧倒的に増えるのです。
40代半ばで出会ったのが下記2冊です。伝説の雀鬼「桜井章一氏」の著書です。2冊とも当時のベストセラーになっており知る人ぞ知るの名著となりました。
<a href="https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784062725521" target="_blank">人を見抜く技術</a>―20年間無敗、伝説の雀鬼の「人間観察力」
<a href="https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784062726061" target="_blank">負けない技術</a>―20年間無敗、伝説の雀鬼の「逆境突破力」
ピアニストが何で麻雀の人の本なんかと思われることも多いですが、本屋に努めていることとなんでも知りたがりの気質がこれらの書籍との出会いにつながったと確信しています。
どこがそんなに凄かったかというとそれは、「平常心」。
桜井氏のいう「平常心」とは、本番を迎えた時に言う「平常心で、平常心で」ではなく「いつも常にそれを行う心」を指しています。
これを読んだ時、心のウロコがホロっと取れた感じでした。いざその時を迎えて「平常心、平常心」では遅すぎるのです。いつか何かあったときに備えて毎日、どんな時もそれを練習しておく、本番を迎えた時もいつもの状態を維持できるということです。
以来、座右の銘として自分の心に刻むことにしました。上記2冊はもちろんマイ蔵書として将来保存します。
これを実行して以来、少しずつ生活の質が変わってきています。以前は超不得意だった”掃除”、”アイロン掛け”などが普通に出来るようになりました。
扉を閉める時は、出来るだけ音を立てないように、静かに歩く、風を感じる、耳を澄ます、体の重心を感じるなど、日々の生活で色々心掛けるようにしています。
そして本番でも周りのものが広く見渡せるようになってきました。

渡辺音楽教室

埼玉県志木市中宗岡にある音楽教室です。楽譜の読み方から高度な演奏法まで丁寧にやさしくお伝えします。

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