パントマイムとピアノ

ピアノのテクニック向上のため、色々な分野からヒントがないかどうか模索しています。その一つがパントマイムです。
パントマイムには、楽器演奏にかなり参考なる考え方があります。
シスターひろみさんのDVDで一番始めに出てくる「弛緩と緊張」です。弛緩と緊張は誰でも分かると思いますがパントマイムにはもう一つ重要な概念があります。
それは「集中」です。あるポーズをキープするために必要な最小限の力を保つことを言うそうです。
この言葉を聞いた時、「これだ!」と思いました。
近年、ピアノ教育では、脱力ということばよく言われております。ピアノは、脱力に始まって脱力に終わる、という何でもかんでも脱力になっています。
私は、体中の力を全て脱力して弾くことが良い、ということに疑問を感じています。
なぜなら体中から力を抜くことは、不可能だからです。フェルデンクライスによると人間には意識とは別に力が入っている場所があるとのことです。例えば「顎」。顎から完全に力が抜けてしまうと口を閉じることができません。瞼も起きているときには上に上がっています。加齢や病気などで瞼の筋肉が弱くなると瞼がドローンと下がって目を開けておくことが出来なくなることもあるようです。他にも血管、心臓、腸など常に緊縮を繰り返しておりそれを意識することは出来ません。
ソ連のピアニスト ネイガウス氏だったと思いますが、「日本人(東洋人?)の留学生は体からすべての力を抜いてふにゃふにゃになることが良いと思っているがそうふぁないんだ」というニュアンスのことを言っているのを何かで読んだことがあります。 
ピアノ演奏時、手もどこもかしこも常に緊縮を繰り返しているので体からすべての力を抜くのはそもそも不可能です。でも集中という言葉を使えば、必要な場所に必要十分の力を入れて必要のない場所は脱力しておく、ということになるのでこれならちゃんと説明することができます。
学生時代、腕を高く上げて力を抜いて下にバタンと落とす、この時の腕が下に落ちる力を使って弾くと習ったことがあります。重力奏法と言います。今でもこのような説明をネットで見ることがあります。
これも今考えると難しいな、と思います。手を鍵盤にのっけた瞬間、下から腕を支えようと無意識に力が働くので落ちる力は使えません。地球にいる以上、体には常に重力がかかり筋肉も複雑に連携して動いておりほとんどの筋肉の動きを意識することは出来ません。重力奏法を考える上でもパントマイムの考え方を使うと体の動きをよく説明することができます。
またパントマイムでは常に体の部分の力の方向(ベクトル)を考えるそうです。
何か動作をするとき、体のパーツは必ずしも同じ方向に力が働くわけではなく別方向に向かう力もあり各パーツの力の方向を考えるということです。
ピアノで力の方向を考えると下から上に一直線と左右に一直線の十字型です。えっなんで上に力が働くの、と疑問に思うかもしれません。物に力を加えるとそれと同じ方向に同じだけの力が働きます。物理の作用反作用の法則ですね。ピアノで言うと下に打鍵する力が加わるとそれと同じだけ上に力が働きます。結構この力を認識してない人も多いかも知れません。脱力というよりもしかしたらこの上に働く力をどういなすかの方が重要です。
ピアノを弾き時は、上から下に一直線に力が伝わると一番効率的です。私もそういう時がありましたが、激しい曲を弾いていると椅子がだんだん後ろに後退してしまうことがあります。これは、ピアノ方向に力が加わりピアノを押しているようなものですが、ピアノは人間よりずっと重たいので押し負けた結果、椅子が後退してしまいます。かなり力を入れて弾いている状態です。理想は、少林寺拳法よろしく床に油が塗られていても椅子は動かないことです。
ピアノを弾き時の力の方向は左右上下、十字型でかなりシンプルですが実際の動きは結構複雑です。手、手首、肘などが波打つように動き真横や上から見たとき螺旋を描いているようになると思います。トレモロのような手首の回転も四六時中入ります。
現在、パントマイムではムーンウォークと壁を少しずつ練習しています。この練習を行うと重心移動ってこういうことなんだな、ということがわかります。
どのように体を使えば効率的に弾けるか今後も研究していきたいと思います。
みんなのパントマイム
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784875864196

2019年2月5日作成 志木市中宗岡 渡辺修司

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