ピアノの先生がよく言うことに「芯のある音を出しましょう」があります。
この「芯のある音」っていったい何でしょうか?
音にリンゴや梨の芯のようなものがあると考えると何となくイメージすることができます。ふわふわした音の逆です。
では芯のある音をだすためにはどうしたら良いのでしょうか?
こう質問されると多くの先生が明解に答えることが出来ないようです。
それほどあいまいなイメージの「芯のある音」。
今日はこの問題の本質に迫ってみたいと思います。
答えはすばり、
タッチして音が鳴った後、そのポジションを保つ
、また音が鳴った後さらに踏み込みそのポジションを保ちながら弾く
、ということです。
鍵盤を打鍵した後は、音は減衰するだけなのでその後は、何をしても音色などを変えることが出来ない、とよく言います。
でも実はそうではないのです。
先ずは、単音で試してみましょう。
鍵盤をタッチして音が鳴ったあと少しずつ力を弱めると鍵盤が元の位置に戻ろうとします。ちょっとしか上げなくても音が急激に減衰していきます。そしてちょうどダンパーの掛かりのところで音が止まります。
つまり音が鳴った後、離鍵を始めた時や鍵盤が元に戻った時に音が止まるわけではなく、ダンパーの掛かりのところ(ダンパーが弦を押さえ音を止める)で音は止まります。
芯のないふわふわした音の正体は、タッチして音が鳴った後、ポジションを保つことができず音が急激に減衰していく音、ということができます。
芯のないふわふわした音=鳴らした音+急激に減衰していく音
芯のある音=鳴らした音+緩やかな減衰音(自然の減衰音)
こう考えるとあいまいなイメージしかない「芯のある音」の正体がはっきりすると思います。
ただし音を保持するって結構難しいです。
ピアノの鍵盤は50gの力があれば音を鳴らすことが出来る、とも言われます。これも残念ながら「タッチ(The Touch) その4」の項で自宅のピアノで実験した結果、間違っていることが分かりました。
ペダルを踏んで鍵盤が沈み始める重さが50g(ダウンウェイト)なのです。
音をならずためには少なくても2倍、100g程度が必要だということが分かりました。これもペダルを踏んでいないときはダンパーの重さが掛かってくるのでさらに力が必要です。また鍵盤の位置(音の高低)によっても重さは変わってきます。
反対に鍵盤が上がってくる重さというのは20g以下です。つまりポジションを保持しておくのは20gの力だけ残せばいいわけです。
なんだそれなら軽いや。と思うなかれ。
曲を弾くと鳴らさなくてはならない音は沢山あります。速いパッセージだったり和音を弾いたりもします。
難易度も上がってくるともう弾くだけで精一杯、ということになりかねません。
テクニックの訓練をしてピアノの音が変わってくるとまだまだ指が弱かったんだと気づかされます。
初心者でテクニックがないひとの指の力はかなり弱いものです。やることが多すぎるので20gの重さを保つって結構きついのです。
「芯のある音」が鳴らせるようになるには、少なくてもショパンやラフマニノフの協奏曲がテンポで弾けるレベルが必要です。
ショパンエチュードまでの道のりが大変遠いのを考えると「芯のある音」のレベルは雲の上にあるようです。
減衰する音もやりようによっては、音色に何とも言えないわびさびを与えることができます。アップウェイトを意識的に調整して弾くということです。これが音が鳴った後もピアノの音色に影響を与えるテクニックです。数ミリ単位の調整をその瞬間で行っていくのでかなりの難易度です。
ここまでくるとモーツアルトやベートーヴェンの抒情楽章、ショパンのノクターンなどを伸びのある音でゆっくりとしたテンポで聴かせることが出来ると思います。
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