ピアノ奏法がピアニストの考えた感覚的なものでなく医学的にも物理的にも正しいものでありたいと考え色々な分野の本を読み漁っていました。
何かピアノテクニックに活かせそうであれば医学書でも武道の本でもスポーツ、物理、数学、漫画等、なんでもです。
この項ではその中でも解剖学に焦点を当て緊張と弛緩について考えてみたいと思います。
ピアノテクニックに関する色々なネットの記事を読むと沢山の方が解剖学、筋肉について勉強されているのが分かります。
私も御多分にもれず何冊も解剖学の本を購入して読みました。そしてあることに気づきました。
それはこの運動では何々筋を使っているとか筋肉の名称を覚えるよりまず筋肉の働く仕組みについて理解する必要があるということです。タッチの項でも触れましたが
・主動筋(動きの主役)
・協同筋(主役のサポートわき役)
・安定筋(主役、わき役、適役など役者をサポートする舞台装置、マネジメント)
・拮抗筋(ライバル)
の4つです。
身体の内部の筋肉活動は別としても表に出る体の動きは必ずこの4つの筋肉の働きがあります。また運動によって筋肉の役割が異なります。演者が交代することがあるわけです。
主動筋はその動きの主となる筋肉です。協同筋は主動筋の動きを助けます。拮抗筋は、主動筋の動きを邪魔するライバルです。でもこのライバル役がかなり重要です。
ピアノの鍵盤をタッチする時、主動筋である手の下の方にある筋肉が指を曲げます。この筋肉だけだと曲げるという運動に特化してしまうので指を痛めるか骨を折ってしまうかもしれません。
そうならないようにこの場合の拮抗筋である手の上の筋肉に程よく力が入ることにより主動筋の働きを弱めるわけです。
安定筋はピアニストの場合(ほとんどの楽器、スポーツもそうです)、腹筋、背筋、僧帽筋、大殿筋など体幹の筋肉を指します。
ある記事によると両腕の重さは身体の13%ぐらいあるということです。
私の現在の体重が約53㎏なのでその13%は約7㎏ということになります。
話は変わりますが私はいつも5㎏のコメを買います。シールを張ってもらい家まで徒歩で500百メートル程度小脇に抱えて持っていきます。他にカバンを肩にかけているせいもありますが、なかなか重いです。それより2㎏増しの重さです。
普通にしていれば私たちは身体の重さを自分では感じることが出来ません。
でもよくよく考えるとピアノを弾いているとき身体の13%の重さの物体が左右前後に揺れたりする動きを支えているということです。
頭の重さもあります。
また地球上にはいつも常に重力があり安定筋はこれを支えています。
人間は立っている状態で前に回転モーメントという重力が掛かります。シニアが筋肉が弱くなって前かがみの姿勢になったり肩が前に出て丸まってしまうのはこの重力に前の方に引っ張られるからだということです。
座っている時は後ろにこの力がかかるとある本に書いてありましたが入院していた父が背筋や腹筋に力入らず前に倒れていたのを見ると座っていても回転モーメントは前に掛かるのではないかと考えております。
安定筋は結構頑張ってくれておりますが私たちは安定筋の緊張を感じとることは出来ません。
ピアノを弾くとき姿勢が良く保たれているのであれば安定筋はほど良く緊張しているのでお腹をへこまして弾く必要は全くありません。当然、僧帽筋、背筋、大殿筋なども固くする必要はないわけです。
意外なことに座っている時は、立っているときより40%も体に負担がかかっているということです。
ほとんど常に座ってパフォーマンスするピアニストの体には、相当の負担が掛かっていることが想像できます。
ただでさえ力の入りやすい初心者は、余計は力を使わないようにまず姿勢をよくすることにこだわった方が良いです。
正しく立っている時、体の重さをほとんど感じないのは関節が体を支えているからです。
ロックバランスの石積みアートを見ていると何とも不思議な気持ちになります、つり合いが取れると重いものでも最小限の力で支えることが出来るということを教えてくれます。
座っている時も、頭を背骨に置き、背骨は自然なS時を描くように立て、骨盤を立て内臓が転がらないようにすることで安定筋の働きを必要十分にできるはずです。
脱力、脱力と不明瞭に動きを考えるより4つの筋肉の働きからピアノのタッチの運動を考えることでどこにどう力を入れたらよいがはっきりとしてきます。
重力は常に体に掛かり筋肉の働きに影響を及ぼしています。力が入っているのにその存在を感じない筋肉もあります。
望ましい筋肉の動きは、演奏というドラマで主役が輝きわき役が濃い感じを出し、ライバルが憎たらしく邪魔をする。舞台装置は音楽、監督、助監督、マネジメントは、役者がしっかり演技できるよう最大限のサポートをする。ということです。
でも初心者には、これが出来ません。そもそも誰が主役でわき役でライバルか分からないからです。
分からないので皆、目立とうと頑張ってしまいます。
これが所謂、ガチガチの状態です。
これを取るには、色々な訓練で徐々にここだよ、ここだよと体に教えてあげるしかありません。
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